【夕餉はギャンブルのあとで】美味しい物は人生を変える!

好きな物を好きな人が描いている。作者のその姿勢が作品ににじみ出ることがままありますが、この漫画もその1つです。

夕餉はギャンブルのあとで (Amazon)

美味い物は嫌なことを忘れさせ、人生をも変える

この作品全般を貫いて語られているテーマがこれです。

この作品、シチュエーションがマニアックというかちょっと複雑です。というか食べ物に全然関係ないんですよね。

主人公は違法裏カジノの腕利きディーラー。危ない橋を渡りながら金と博打の駆け引きで身をすり減らしながら生きています。

最初は、こういう裏カジノで出される仕出し弁当は超豪華だ、という話で始まりはするのですが、以降、カジノ稼業と食べ物の話は完全に別世界のものになっていきます。

カジノ稼業…というか「しんどい現実社会」での緊張したスリリングな世界と、無防備に脱力してただ美味を楽しむ美味い飯の世界。

博打で下手を打って大負けしたり、負けられない勝負があったり、しょっぴかれて収監されかけたりと、そういった現実社会でのつらくてしんどいドラマ部分をしっかりと描いた後で、主人公が「ふと」良い飲食店に引き寄せられ、料理に舌鼓を打ちます。

主人公がまた本当に美味そうに食べるんですよ。ああこれ、作者さんも美味いもの食ってるような顔しながら描いてるんだろうなあとか思ってしまいます。

1巻第3話「験担ぎの蛤炒めと揚げパン」より

グルメ漫画の食事シーンって、女の子がエロい顔したりおっさんが発狂したりとか、とかく派手なのが多いんですが、この漫画での美味しい演出は、あくまで「料理に興味が全部持ってかれて夢中になる」がメイン。

リアクションよりは、心と胃袋が美味い物に全集中していく過程を描いているんですよね。そこのリアリティが素晴らしい。

どんなにひどい目にあったり心配事を抱えていても、本当に美味い料理を食べ始めたら、人間それ以外のことは考えられなくなります。この漫画の作者さんもきっとそういう類の人なのではないでしょうか。とても演出に説得力があります。

食べものの絵も良いです。上手いというよりは美味い。漫画のあとがきに書いてあったのですが、作者さん、趣味が料理だということで納得も納得です。

やっぱ好きな人が好きな物描いてるのが最強ですよね。

で、一心不乱に料理を食べ終わった後は、リラックスして一旦現実から離れてすっきりした頭で再度問題にあたって良いアイデアを思いついたり、気にしないことにしたりと、ポジティブな変化が主人公に訪れるというのが、この作品の骨子です。

よくできてます。

美味い物は嫌なことを忘れさせてくれて、人生をも変える。共感できるメッセージだと思います。

キャラがぐいぐい引っ張るドラマ部分

食べもの世界だけでなく、裏カジノドラマ世界も面白いです。

魅力的なワルの上司「エンディさん」は、ひたすらカッコいいです。成功してるし。「男にかわいそうとか使ってんじゃねーよ」は、キャラがたってて良いセリフだったなあ。

計算高いミステリアスな若いママ「今日子」は、騙してるようで騙されているようで……というあやうさが魅力ですね。「女=政治強い」みたいなテンプレキャラでないところが良いです。

実際、彼女そうとう強いんですが、あのメンツの中だとやはり若さもあって「到底かなわないのでは」「いや、でもやってのけるのでは」と思わせる緊張感がたまらないです。

 

これで終わってもよかった程の第1巻、驚きの第2巻

1巻、すごくきれいにまとまっていて、個人的にはこれで最終回でも文句なかったです(ボリュームとしてはもっと読みたいけど)。

いいお話としてまとまってました。

……が、2巻でまさかの展開。これは自分もあいつ同様してやられました。読者目線ではノーヒントなのでわかるわきゃないんですが、それでも「やられたー」と思えましたよ。

で、そこからさあどうなる……? と思いきや……!

これ以上はネタバレなので書きませんが「なるほどなー」というオチがありつつ

は? これでおわり!?

ちょ、ちょっとまてよ、もっとこれ読みたいし続きだってもりもりかけると思うんですけどー!!

ちゃんと終わってて別に変ではないのですが、こんなに面白いのに終わる理由がわからないwwww

ただ、ラストはやっぱり「美味い物は嫌なことを忘れさせ、人生をも変える」を貫いていて、これ最初からこうやって終わらせるつもりだったのかなあ、とか思いました。

「あとで」も効いてた秀作

この漫画は構成面でも、タイトル「夕餉はギャンブルの後で」の通り、「あとで」食べる美味い物の強い感動と官能を賛美した、一本筋の通った漫画でした。

自分もつらいことがあった時に、熱いラーメンや焼き肉を食べると、強烈に元気出たりしますからね。終始「わかるわかる!」と思いながら読んでましたね。

その上で、美味い物が主人公の人生の節目で良い変化もたらすストーリーテリングもお見事。日々の現実がしんどくて頑張ってる人に読んでもらいたいです。

主人公が奔放に美味を堪能する食事シーンは、共感とシンクロでスカッとしますよ!

今なら、Amazonの KindleUnlimited で 1巻をよめちゃうので、それに入っていたら2巻だけ買えばよい感じ。そうでない人でも、2巻で完結なのでさくっと買えちゃいます。

ちょいとお仕事の「あとで」、美味い物の漫画を読んでみてはいかがでしょうか?

夕餉はギャンブルのあとで (Amazon)
スポンサーリンク

よく読まれている記事

スポンサーリンク

よく読まれている記事